協調ロボティクス研究室では10月15日〔火〕~17日〔金〕、幕張メッセで開催されるCEATEC2024に出展いたします。今回の展示会では「空気を読める賢さ」を実現するため、研究生が最新の研究成果やデモンストレーションを紹介いたします。
バランス制御と聴覚刺激の関係性を探る革新的研究
視覚、前庭覚、聴覚、体性感覚は、人間のバランス制御に深く関わっています。これまでの研究では、視覚刺激や皮膚への圧力提示がバランスに与える影響が多く調査されてきましたが、これらの手法は装置の大型化や移動時の安全面に課題があります。そこで本研究では、聴覚に注目し、音刺激を提示した際に生じる重心動揺を測定することで、聴覚とバランス制御の関連性を評価しています。
今回の展示では、乗った人の現在の重心をリアルタイムで計算し、その結果を表示するシステムを紹介します。このシステムを通じて、聴覚刺激がバランスにどのように影響を与えるかを体験していただけます。
痛み緩和の新アプローチ:手を握られる効果の科学的探究
薬を使用しない痛み緩和手法として、近年「手を握られる」という行為に注目が集まっています。特に看護の現場で、手を握る動作が痛みを軽減する効果があるとされていますが、具体的に何がその効果を生み出しているのかは十分に解明されていません。また、手を「握る」ことと「握られる」ことの違いが痛み緩和にどのように影響を与えるのかについての研究も進んでいないのが現状です。
本研究では、非侵襲的な痛みの提示装置を開発し、異なる条件下での痛み緩和効果を調査することで、痛みを和らげる要因を特定することを目指しています。特に「手を握られる」ことに焦点を当て、その行為が痛みの感覚に与える影響を探るために、ハンド型デバイスを用いた実験を行っています。このデバイスは、実際の「握られる」感覚を再現し、身体的・感覚的な反応を詳細に分析することが可能です。
今回の展示では、非侵襲的な痛み提示装置とともに、「握られる」感覚を再現するハンド型デバイスをご紹介します。これにより、手を握る動作が痛み緩和にどのように寄与するのかを科学的に解明することを目指しており、今後の看護や医療分野での新しい痛み緩和方法の可能性を広げることを期待しています。
視覚的注意分布の解明:視線速度と視覚的注意の広がりを紐解く
私たちは、視線速度がヒトの視覚的注意の広がりに影響を与えると考えています。この仮説に基づき、視線速度を使って注意分布を計算する数理モデルを考案しました。このモデルを視覚的注意の評価に用い、さまざまな認知現象の解明に挑戦しています。
今回展示するデモは、視線追跡デバイスを使用して時系列の注視点座標をリアルタイムで取得し、数理モデルを使用して視覚的注意を描画します。視線が速く移動している際には広く浅い注意分布が形成され、遅い場合には狭く深い注意分布が形成されます。
仮想空間での物を掴む感覚をリアルに再現する研究
研究では、物体を把持する際に手の各部にかかる力を「力分布」として捉え、その力分布を振動振幅の制御を通じて再現することを目指しています。このアプローチにより、仮想環境での物体操作時に、現実の把持感覚に近い手掛かりを提供し、操作性の向上を図ります。実験では、複数の振動条件に対する操作パフォーマンスを、実際の環境での操作と比較し、仮想環境において現実に近い操作性を再現するための適した振動条件を調査しています。
今回展示するデモでは、仮想物体との接触を振動を通じて感じ取ることができます。さらに、物体の傾きや操作に応じて握る感覚が変わる体験を楽しんでいただけます。まるで現実に物体を握っているかのような感覚を、ぜひお試しください!
指先への力覚提示で道具操作を支援する新たなシステム
人間は、指と道具、そして道具と物体の相互作用を巧みにコントロールし、道具を使いこなしています。これまでの熟達支援システムの多くは道具そのものに焦点を当てていましたが、指の動きや力の作用に注目したものは少ないのが現状です。そこで本研究では、指先にかかる力を制御する新しい熟達支援システムを提案します。このシステムは、モーターを使ってワイヤーを引っ張り、指にかかる力を調整することで、精密な道具操作をサポートします。
特に、筆記動作に焦点を当て、指先にかかる力覚が熟達にどのような影響を与えるかを調査しています。この手法が、筆記や他の道具操作においてどのように効果を発揮するかを実験的に検証し、道具操作の熟達を支援する新しいアプローチを探求しています。
今回のデモでは、実際に装置を指にはめていただき、ある記号を動かしていただく体験を提供します。デモを通じて、どの指にどのくらいの圧力がかかっているかを視覚的に確認しながら、力の調整や操作の矯正を行うことができます。この体験を通じて、力覚提示が熟達支援にどのように役立つのかを実感していただけるでしょう。