事故や病気などにより失った関節運動の再建などのリハビリテーション分野や運動学習では療法士や、教示者が口伝、徒手で指示をしています。しかし、運動の感覚は人によって異なり、教示者の意図する動作を学習者に正確に伝えることは困難です。
一方で、運動学習支援には筋電気刺激を用いたアプローチもあります。ボウリングの投球動作の支援を目的とした論文では、球の傾きを画像的に認識してズレを補正する電気刺激を腕部に提示するシステムが開発されています。左にズレたら腕部の右側の筋を収縮させズレを補正するといった具合に、投球のフォームを補正していくわけです。
このようなシステムは口伝、徒手より効果的に学習ができることがわかっていますが、過度な筋疲労を招くという問題点があります。人が何かしらの動作をする際は複数の筋が協調してこれを実現させます。一方、電気刺激を用いた運動は本来の筋活動とは異なります。外部からの電気刺激で誘起される筋にかかる負荷が多くなり、筋疲労に繋がるわけです。
そこで、本研究では筋シナジー解析を用いて教示者の筋の協調的な活動を分析し、筋電気刺激を用いて学習者の筋シナジーと教示者の筋シナジーが一致するように補正します。このシステムを用いたときに従来法に比べてどれほど筋疲労が軽減できるかを評価、検証します。